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廃カニ殻から抽出する新素材〜マリンナノファイバー

マリンナノファイバーとは?

 マリンナノファイバーとは、鳥取大学の特許技術によりカニ殻などの甲殻類の外皮から製造された極細(10~20nm)のナノファイバーです。原料としてはカニの甲羅に含まれるキチンです。従来のキチン粉末では出来なかった、水中での均一な分散性が実現され、他の材料との配合・成形が容易になりました。
さらにはナノファイバーにすることで新しい機能・効用も多く発見されています。

 

 

マリンナノファイバーの構造

マリンナノファイバーは、カニ殻などの甲殻類の外皮組織からキチンを超極細繊維の状態で取り出したものです。

カニ殻の断層的な組織構造

 

この研究のきっかけ

鳥取という土地柄、カニの水揚げが日本一の境港がある。カニ殻が大量廃棄されている現状から、この殻を有効利用できないものかと考えたのです。京都大学で樹木のセルロースから繊維を取り出す研究をしていたことも有利でした。

研究の始まり~現在

旅館からカニ殻を集めていただくようお願いしたり、自ら大量にカニやエビを購入して材料を確保したんです。様々な努力の結果、1ヶ月ほどでキチンからナノファイバーを取り出せました。

キチンは粉末にしただけでは水に溶けないのですが、ナノファイバーは非常に微細な繊維のため、水に拡散してゼリー状になります。この特性は他の素材とも相性が良く、様々な活用法が生まれてくるんです。

ナノファイバー自体がかなりの強度を持っていますし、熱にも強くまた透明性を損ないません。これをプラスチックに混ぜればデジタル端末や様々な工業製品に使える可能性があります。

研究が進み、最近では生体に対しても有効な機能があることが分かってきました。

マウスでの実験結果ですが、ゼリー状のマリンナノファイバーを皮膚に塗布したところ、コラーゲンが増えることが明らかになりました。

 

機能・効用

◎保湿効果
3次元皮膚モデルを利用してマリンナノファイバーの表皮組織への効果を検討しました。マリンナノファイバーを添加した水では長時間、皮膚のバリア機能が向上し、外部からの刺激を防ぎ、保湿性を高めることが期待できます。

 

◎創傷治癒の促進効果
皮膚欠損したラットの傷口にマリンナノファイバー(マリンNF)を塗布した皮膚を8日後に採取し、HE染色を施し皮膚組織の変化を観察しました。その結果、マリンNFを塗布すると、顕著に表皮が再生し、その下の肉芽の形成を促進することがわかりました。

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鳥取大学大学院准教授
伊福 伸介
学歴:京都大学大学院博士課程 博士(農学)
職歴:京都大学、ブリティッシュコロンビア大学の研究員を経て、鳥取大学に赴任、2011年から現職。
受賞歴:2013年に若い世代の特別講演会講演証(日本化学会)、科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞など
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