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連載 コラーゲンの基礎の基礎

コラーゲンの基礎の基礎(上)

ヒトとの関わり?毎年1月26日はコラーゲンの日!?

体を作っている全タンパク質の20~25%がコラーゲンであり、真皮層に関しては90%以上がコラーゲンで構成されています。コラーゲンは、皮膚、骨、歯、角膜、血管、腱等に存在しているため、コラーゲン不足は肌老化だけでなく骨や血管にも悪影響を及ぼします。

例えば、16~18世紀の大航海時代に「船乗りの天罰」と恐れられた「壊血病」も、ビタミンC不足によりコラーゲンが体内で十分に合成出来なかったことが原因であり、探検家コロンブスは新鮮な果物やイモなどを補給することで、壊血病を免れたと言われています(図1-1)。

ヒトとコラーゲンの歴史は古く、5000年以上前にエジプトで獣類の皮や骨等から水で煮だしたゼラチンを主成分とする天然の接着剤であるニカワ(膠)が使用されていたことが報告されています。コラーゲン(Collagen)の「コル」が「ニカワ」、「ゲン」が「もとになるもの」を意味することからも、人間がコラーゲンを意識し始めた始まりがニカワの利用であったことが伺えます。
その後、1700年頃よりヨーロッパでゼラチンの工業的な生産が開始され、1800年代には精製度の高い食用ゼラチンが製造されるようになりました。その後、食用以外にも、写真のフィルムに使用されるゼラチン乳剤、菓子箱等の接着剤、建築・楽器等の接着や修理用等、コラーゲンは私たちの身近なものとして古くから使われてきました。
1930年代頃からコラーゲンの構造解析に関する研究が進み、コラーゲンが約1000個のアミノ酸が結合したポリペプチドから成っており3本のポリペプチドが三重らせん構造をとった細長い分子であることが分かってきました(図1-2)。しかし、体内に存在するコラーゲンは「水に溶けないタンパク質」であり、三重らせん構造を維持した非変性の状態で抽出する方法の確立が課題となっていました。

1960年に酵素処理によるコラーゲンの可溶化技術が特許出願され、抗原性部位(アレルギー反応を起こす部位)が除去された生体適合性の高い非変性のコラーゲン=「アテロコラーゲン」の開発および製品化が行われるようになりました。そのため、コラーゲンの可溶化技術に関する特許(特許番号:第306922号)が出願された1960年1月26日は、コラーゲンが広く応用されるようになる第一歩を踏み出した、記念すべき日として、「コラーゲンの日」とされています。

意外と奥の深いコラーゲン?ゼラチンとの違いは?

その後、アテロコラーゲンの量産化技術が確立され、国産初の化粧用コラーゲンが製品化されたのは1978年でした。当時、既にドイツ製のコラーゲンが化粧品用途で一部出回っていましたが、これらの多くは酸可溶化処理などで抽出されたもので、抗原性をもつテロペプチドが未処理のままで濁りがあるなど、化粧品原料には不向きな点があったため、日本においてはアテロコラーゲンの利用が主となっていきました。アテロコラーゲンは、高い生体適合性・生分解性などを有することから、現在では医療機器・研究用試薬などにも幅広く利用されています。

生体内に存在するコラーゲン(Nativeコラーゲン)は、3本のポリペプチド鎖がらせんを巻いた「3重らせん構造」の不溶性の繊維状タンパク質です。その構造は熱に解けてゼラチンになり、さらに酵素分解等で低分子化し、コラーゲンペプチド(加水分解コラーゲン)になります(図2-1)。基は全て同じですが、製造方法によって分子量や物性が異なります。


Nativeコラーゲンの両末端に存在する抗原部位(アレルギーの基となる部分)であるテロペプチドは、酵素やアルカリ処理にて除くことが出来ます(図2-2)。テロペプチドが除かれた「アテロコラーゲン」は、Nativeコラーゲンやゼラチン、加水分解コラーゲンに比べ、抗原性が低く、生体適合性が高いコラーゲンです。その他に工業的に酸抽出法も採用されていますが、酸抽出により得られるコラーゲンはテロペプチドが残ったままのNativeコラーゲンになります。

以上のことから、化粧品表示名称の定義に合わせると、コラーゲン、ゼラチン、コラーゲンペプチドは以下のように分類されます(表2-1)。

表2-1 コラーゲンの分類

一般名 一般的な製造方法 分子量 化粧品表示名称(一例)
Nativeコラーゲン 酸抽出(低温抽出) 30万
(3重らせん)
コラーゲン
水溶性コラーゲン
プロコラーゲン
アテロコラーゲン 酵素またはアルカリ抽出(低温抽出) 30万
(3重らせん)
コラーゲン
水溶性コラーゲン
アテロコラーゲン
ゼラチン 酸またはアルカリにて前処理後、加熱溶解 数万~数十万 ゼラチン
コラーゲンペプチド 酸・アルカリ・酵素による分解 数百~数千 加水分解コラーゲン

なお、健康補助食品の成分として利用されているのは、ほとんどがコラーゲンペプチドですが、市場では、これらが区別されず、いずれも「コラーゲン」と呼ばれることが多いです。

コラーゲンの基礎の基礎(下)

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監修:株式会社高研

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