哺乳動物の表皮は水分の喪失や環境ストレス、化学物質や感染からの防御機能が携わっています。この保護機能は肌の中の構造タンパク質と角質層の角質細胞と特殊な脂質によって構成されています。
フィラグリンとカスパーゼ14は共に表皮の顆粒層及び重層扁平上皮に発現しているタンパク質です。フィラグリンはケラチン結合タンパク質として角質層の下層に存在して、皮膚のバリア機能に重要な働きをしています。フィラグリンは巨大な前駆体分子であるプロフィラグリンとして生合成されます。角化細胞が分化していく中の特別なプロセスによってフィラグリンへと変化していきます。
角質層の中層、上層ではフィラグリンは水分保持力を持った遊離アミノ酸へと分解されます。最近の研究で、フィラグリン遺伝子の異常が、皮膚が乾燥する病気の尋常性魚鱗癬などを引き起こすことが報告されています。同様にフィラグリンの変異はアトピー性皮膚炎に関連があるとされています。現在、皮膚病変を持つ患者のうちの多くがフィラグリン遺伝子に突然変異を持っていると言われています。
カスパーゼ14は表皮の中でフィラグリンと共に発現しているタンパク質分解酵素の一つです。最近の研究で、カスパーゼ14はプロフィラグリン分解酵素としての機能と紫外線からの防御機能があることがわかっています。カスパーゼ14がプロフィラグリンを分解し、保湿機能を持つ遊離アミノ酸を増やすことで肌のバリア機能を正常に保つことができます。
カスパーゼ14はシステインプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)であるカスパーゼファミリーに属します。体内では表皮の他に,口腔粘膜や胃などの上皮系組織に多く存在します。他には胸腺や胎盤中の栄養芽細胞にも発現しています。マウスの胚形成の過程では発生後16?18日目前後で表皮バリア機能の形成途中でカスパーゼ14の発現が見られることから表皮の形成に大きな影響があることが示唆されていました。一方実験系の中では、通常のカスパーゼの活性化が起きるレベルでの紫外線照射に対して、全く反応を示さないといった他のカスパーゼと全く違う特徴を持っています。
カスパーゼ14の機能を評価するためにカスパーゼ14遺伝子を消失させたノックアウトマウスを使用した実験では、ネズミの皮膚はフィラグリン分解に異常をきたしTEWL(経皮水分蒸散量)が増加するなど、バリア機能と紫外線に対する防御能の低下が報告されています。
カスパーゼ14が増えれば肌はもっとキレイになる。
上記をまとめると、カスパーゼ14はフィラグリンを分解してNMFを作る上で重要な酵素ということがわかりました。カスパーゼが正常に働けばNMFがどんどん表皮に作られて肌のバリア機能が正常に保たれるということです。このカスパーゼ14を増やすにはいったいどのようにアプローチすればよいでしょう?
カスパーゼ14の研究をしている研究室がある。
東京電機大学理工学部の長原礼宗准教授の研究室ではカスパーゼ14を増やす物質の探索をしています。ヒト角化細胞を利用したカスパーゼ14の増加検出法を確立していて、既にいくつかの生体成分に、細胞内のカスパーゼ14の量を増やす作用を発見しています(カスパーゼ14合成促進剤 [特開2013-180970 ( P2013-180970A)])。
長原研究室は積極的に化粧品会社、化粧品原料会社との共同研究を行っています。ご興味のある会社はこちらまでご連絡ください。